アンドレアス・クリーガー（1965年7月20日ー）は東ドイツの女子砲丸投げ選手である。
彼女は、16歳から、東ドイツ当局によって組織的にアナボリック・ステロイドを投与されていた。彼女はドーピングについては知らされていなかった。現役引退後、身体的に女性に戻ることが不可能と知ったクリーガーは性別適合手術を受け、男性として生きていくことに決めた。
陸上選手としてのキャリア
1986年ヨーロッパ陸上競技選手権大会の 砲丸投げでは、21.10mを記録し金メダルを獲得。クリーガーは1991年に引退した。
ドーピング
ヴェルナー・フランケとブリジット・ベレンドンクの1991年の著書『Doping：研究から欺瞞まで』によると、クリーガーは1986年に約2,600ミリグラムのステロイドを摂取しており、これは1988年の夏季オリンピックで ベン・ジョンソンが摂取した量よりも1,000ミリグラム近く多い。
早くも18歳のとき、クリーガーは目に見えて男性的な特徴を身につけ始めた。やがて長年のドーピングにより、男と見分けがつかなくなった。1997年、31歳のとき、クリーガーは性別適合手術を受け、名前をアンドレアスに変えた。
2004年の『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューでは「男になってよかった」と語っている。しかし、本人の同意なしにホルモン剤を投与されたことで、「どちらの性になりたいかを自分で見つける」権利が奪われたと感じていた。クリーガーの性転換手術はドイツのニュースの見出しを独占し、東ドイツにおける組織的ドーピングに広く注目が集まり、他の元アスリートたちが初めて公の場で発言するきっかけとなった。
東ドイツオリンピック委員会の会長であったマンフレッド・イーヴァルトとメディカルディレクターを務めたマンフレッド・ヘップナーはともに、「未成年者を含むアスリートへの故意の身体的危害」の共犯者として有罪判決を受けた。
クリーガーが引退を余儀なくされたのは、ステロイドを使用しながら大量の重量を持ち上げたことによる激痛のためでもあった。現在でも臀部と大腿部に激痛があり、軽い運動しか耐えられない。
クリーガーの名を冠したハイジ・クリーガー・メダル（ドイツ語：Heidi-Krieger-Medaille）は、現在、ドーピングと闘ったドイツ人に毎年授与されている。1986年に授与されたクリーガーのゴールドメダルは、トロフィーの一部となっている。
私生活
男性となったクリーガーは、元東ドイツの水泳選手ウテ・クラウゼと結婚した。彼女もまた東ドイツのスポーツ当局による大規模なドーピングの被害者だった。
ELC氏による解説