よく晴れた初夏の朝。僕はふと思い立ち新潟方面へ旅に出た。とにかく人混みを避けて、美しい自然の景色を眺めて癒されたい。
途中、趣のある温泉があるらしく、立ち寄ることにした。
法師温泉 長寿館は創業1875年、国登録有形文化財に指定されている歴史ある温泉宿。
受付で食事セットを利用するか尋ねられたが、僕は日帰り風呂の代金だけを支払った。
かがんで歩かなくては頭をぶつけてしまうほど梁りが低く、テレ東のナナナ状態になりながら廊下を進む。大浴場はすぐそこだ。僕はドキドキしていた。
少し緊張を感じながら大浴場の扉を開けた。そこには圧巻の光景が広がっていた。
大浴場「法師乃湯」明治時代建造の高い天井、窓から光が差しこみ幻想的に照らされた風呂には、ギッシリと敷き詰められた温泉玉子のように男達がいた。
そこは混浴風呂のはずだった。しかし、そこには不自然に長湯している男達しかいなかった。
ドキドキしていた。
温泉の質は優しく僕の好みだった。ポコポコと床から湧き出る温泉。熱すぎない無色透明の湯から立ち上る白い湯気は高い天井へ消えてゆく。良い湯だ♨︎　
僕は長湯で硬ゆでになった温泉玉子になってしまわないうちに、風呂を出た。
まったくこれはハードボイルドな話だ。
ナナナ
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法師温泉
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