パリから日帰りの旅というのをシリーズにしたらどうかと思い、今回の動画ではパリから南東に60㎞、日帰りのドライブに最適、かつ見学にちょうどよい規模のお城をご紹介します。
その城の名はVaux-le-Vicomte（ヴォー・ル・ヴィコント）といい、1656年から5年かけて造られました。
当時の城主はNicolas Fouquet（ニコラ・フーケ：1615-1680）、法律家で財務官、ルイ14世の大蔵卿です。有力な貴族の地位と知性、資産家と娘との結婚により財力も手に入れ、本人はマザランの後の政府の頭にまで上りつめようとしていたそうです。
フーケはまた芸術家や文筆家（ラ・フォンテーヌ、シャルル・ペロー、モリエール、コルネイユ、スカロンなど）を擁護していたのも有名な話で、プッサンやヴェロネーゼを購入したり、27000冊もの蔵書があったり、自身でも詩や歌を書いたりと博識で芸術にも造詣が深かった人です。各所に城や地所を持ち、サン・マンデの城ではサロンを開き、文筆家や医者、哲学者などと交流しました。
そんな彼の美学とセンスと当時の最新の技術を結集した城がヴォー・ル・ヴィコント城でした。しかしこの城があまりにも素晴らしかったために、逆にその自信と野心が砕かれるきっかけになってしまうのは歴史の悲劇としか言いようがありません。見せびらかさなければよかったのに！と思ってしまいます。（詳しくは動画をご覧ください☆）
フーケ失脚後、城の中にあった豪華な家具やタペストリー、彫像、絵画などは没収され、ヴェルサイユ（1661年（！）にルイ14世により増築開始）に運ばれました。城館は供託に付され、フーケ夫人のもとに返還されたのは12年以上もたってからだったそうです。
しかしフーケの長男は相続人なくして他界し、城はその後、ヴィラール元帥～プララン公爵～アルフレッド・ソミエ氏と城主を変えます。このソミエ氏こそが何も残されておらず廃墟となっていた城と荒れ果てた庭園を大修復工事でよみがえらせ、17世紀の家具や調度品を収集してかつての城を復元させたのです。現在もプライヴェートな城で、ソミエ氏の曽孫ドゥ・ヴォゲ氏がその意志と事業を継いでいます。
この17世紀の傑作である美しい城を今、私たちが訪れることができるのも、熱意をもって莫大な私財を投じて歴史を保護しようとする人があってのことなんですね～。
というわけで、城館の内装や部屋の使用用途、家具・調度品などはフーケの時代のままではないのですが、建築や庭園の随所にその美学は残っていますし、17世紀の貴族の城ってこんなだったんだ～というのを感じていただけると思います。
では、このヴェルサイユを生んだきっかけになったお城、見学に参りましょう！
mail : ikoiko.kininaru@gmail.com
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