【朗読】山本周五郎「おもかげ」 「お母さま、弁之助はきっと人に負けないりっぱな人間になります、お母さまがお望みなさるような武士らしい武士になります、~」

越前勝山藩の大目付旗野民部の子、弁之助は七歳の夏に母を亡くした。母の妹由利は姉から
弁之助の世話を頼まれた。中秋の中頃父は主君の御供をして江戸へたち、落ち着いたら弁之助を呼び寄せるが二三年の間は叔母の由利の申し付けをよく聞いて勉強に励むようにと言い残したのだ。叔母は思いやりの深い優しい気性だったが母が死んでから叔母の態度は変わり始め我儘は禁じられ食物の好き嫌いは武士の恥ですと叱られ手指の爪を噛む癖も手をとって強く打ち悪い癖だからやめるようにと云われた。弁之助は寝所へ入って燈を消した闇の中でやっぱりお母さまがいちばん自分を可愛がって下すった、そしてお母さまは今でも自分の側にいて立派な武士になるようにと護って下さるんだと思い、誰のためでもない母のために、きっと優れた武士になって見せる。幼い彼はおもかげの人にそうよびかけるのだった。
彼が十一歳になった年に江戸の父から出府するようにという知らせがあった。
叔母は目に涙を溜め思いがけないいたわりを見せてくれたが、彼にはまるで目に入らず、母の墓と別れる悲しさのほかに何の未練もなく立っていった。
弁之助が十六歳になったとき主君が参勤のいとまで帰国する時、供を申付けられて故郷へ帰ることになった。そのことが決まった日の宵に夕食の後父の民部から聞かされた話は…。
叔母、由利の真意は…。

Пікірлер: 2

  • @user-rq4hm3tl2k
    @user-rq4hm3tl2k17 күн бұрын

    幼くして母と死別した甥を姉に代わって厳しく育てた叔母、家格から将来が約束された甥をそれに恥じない人物にしようとした叔母の姉妹愛に涙が止まらない。

  • @user-ee4qi5tt1v

    @user-ee4qi5tt1v

    16 күн бұрын

    コメントありがとうございます。最後の仏壇の姉に向かって語りかける由利の言葉に泣かされます。

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