精神科医と患者さんの相性について。相性とは何か? 

01:22 症状が出る要素
03:01 相性とは
04:53 相性の良い医師どう探す?
06:07 「相性」とは呼ばないもの
本日は「精神科医と患者さんの相性とは何か」というテーマでお話しします。
よく「結局、精神科医と患者さんは相性の問題なんだ」と言われます。患者さんからも言われますし、コメント欄でも見かけます。
相性が良い人を選ぶにはどうしたら良いですかとよく質問を受けます。
僕もそのことについてよく考えていて、自分の何がいけなかったのか、自分はどういう人間なのか、自分のやっている医療はこれでよかったのか、など悩みます。
そういう中で「相性」とは何かをよく考えています。
相性なんかないと否定するのは簡単ですが、単純に否定しても意味がありません。
2022年4月の僕が思う相性について語ってみようと思います。
■症状が出る要素
精神医学の症状はどのような要素で決まるかと言うと、まずは脳が持っている神経回路です。
その人が持っている脳の形、特性、脳神経の放射の仕方です。
その神経回路のあり方とその時の体調によって今の症状が出ます。
不安を感じやすい回路の人が体調が悪いと、不安障害が出たりします。
発達障害のような回路を持っている人が職場でストレスを受けると、うつになったり発達障害の症状が出たりします。
神経回路上の問題はなくても体調が悪いとネガティブになったりします。
怒りっぽい人は疲れていると怒りっぽくなったり、普段は怒っていなくても家に帰ると怒りっぽくなったりします。
うじうじしやすい人は、調子が悪いと職場では大丈夫でも家に帰るとうじうじしたりします。
ですから、体調は結構影響します。
・神経回路
脳の神経回路はどのようにできているかというと、「遺伝子」と「記憶・学習」です。
生まれの問題と育ちの問題で決まります。
遺伝子の割合で決まることが多いところもあれば、学習の割合が大きいところもあります。
学習や記憶のことを「チューニング」と「プルーニング」と言います。
■相性とは
結局、相性とは何かと言うと、神経回路に関するところが似ている、親和性があると「相性が良い」ということなのかなと最近思うようになりました。
理屈っぽいのが好きな人は理屈っぽいドクターを選びます。
僕は理屈っぽいので、患者さんも理屈っぽいのが好きみたいです。
理屈っぽい患者さんがよく来ます。
研修医のときには、医者はどんな人も診ることができなければいけないと思っていましたが、卒後10年以上、開業して5年目にもなると、「相性はある」とわかりました。白状します。
僕は完璧ではありません。
僕の欠点をちょっと好きでいてくれる人、僕のことをわかってくれる人が患者さんとして来た方が治療がうまくいくことはあります。
それは、僕の場合だと理屈っぽい遺伝子を持っている人や、似たような価値観、問題意識、学習体験の人になります。
また、ロールモデル、目指したい人、どういう人間でありたいのかが似ていると、やはり治療はうまくいくのだろうなと思います。
逆に言うと、価値観の幅を広く持てるようにしていく、問題意識をいろいろなところに持つ、さまざまなロールモデルを持てるようにしておいた方が、いろいろな患者さんと相性よくやれるのだと思います。
■相性の良い医師どう探す?
患者さんから見ると、どうやって自分と似たドクターを探せば良いのだろうと思うと思います。
それは結構難しいです。
僕がお勧めするのは、やはりホームページを見ることです。
その先生のホームページを見て、どんな人なのか、どういうメッセージを送っているのか、どういう写真を使っているのか、などを見ます。
僕のホームページも最初に写真を出していますが、あれは自意識過剰と言うよりは、美容整形のホームページを真似た方が良いというデータがあるためです。美容整形のホームページがクリック率としては最強で、予約をしやすくなるホームページと言われているので真似ているのです。
恥ずかしくて白状してしまいました…。
■「相性」とは呼ばないもの
でも、こういうことは相性とは呼ばない、というものもあります。
患者さんが思っている「相性が良い」と、僕らが思っている「相性が良い」というのは少し違います。
「冷静であることと冷静でないこと」、この軸のバランスとして「相性が良い」と言うことがあります。
ある患者さんは、距離が近く主治医と一体感を感じられる、ライブ感があるようなもの。そういうものを相性が良いと呼ぶことがあります。
ですがこれはあまり正解ではありません。
価値観の押し付けになってしまったりもしますし、すごく近いが故に、投影や転移などいろいろなことが起こります。
ある意味、恋愛感情が揺さぶられたり、そういうことが起こります。
ですからすごく危険な状況です。
では逆に冷静なドクターが良いのかというと、これもちょっと違います。
こういう時は感情が揺れません。
ただ淡々と扱われて、確かに正しい薬はもらえるし正しい医療を提供してもらえる、正しい診断をしてくれるかもしれませんが、これだけでも良くなりません。
それは、治療というのは薬だけで治るものではなく、新しく学習し直す必要があるのです(チューニング/プルーニング)。
学習し直して、育て直されるような感じ。新しい学習をすることで少しずつ変わっていく、教育的な要素が必要です。
面白い授業をしてくれる先生だと成績は伸びますよね。
でも淡々とやられたらあまり伸びません。
イヤイヤ英単語を覚えてもなかなか覚えられません。
でもポケモンなどゲームをやりながら覚えれば、楽しいのですぐ覚えてしまいます。
そういう感じで、ある程度感情を揺らす必要があります。
心地よい感情があった方が、トラウマや嫌な記憶があっても、楽しいことや人を信じても良いという学習がしやすくなります。
でも、感情を揺らすからといってトランス状態になって一体感を求めるとやはり危険です。
バランスがすごく重要です。
患者さんと適正な距離を保ちながら、安心感を与える演出をするのが良いのではないかと思います。
ですから、トランス状態にいるのは僕は「相性」とは呼ばないと思いますし、適正なところにいられるのが精神科医の腕なのではないかと思います。
精神科医としてバランスよくやりますが、でもそれを超えてなお「相性の問題」というものがあるのではないでしょうか。
今後さらに経験を積んでいくとまた違う考えになっていくのではないかと思いますが、現時点で僕が考えるベストが今回のお話です。
-------------
どんな精神科医を選べばいいの?
• どんな精神科医を選べばいいの? #早稲田メン...
-------------
【メンバーシップ】
このチャンネルのメンバーになって特典にアクセスしてください:
/ @masudatherapy
スマホアプリからだとメンバーになることができません。
PCもしくはブラウザから申し込んでください、すいません…
• 1分で分かる!メンバーシップの登録方法
【精神科医がこころの病気を解説するChとは?】
一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
   早稲田メンタルクリニック院長 益田裕介
【自己紹介】
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年都内で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。
【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3 www.medsi.co.jp/products/deta...
倫理規定について note.com/mentalyoutubers/n/nb...
【コメントについて】
・コメントは承認制です
・コメントは益田が目を通していますが、手が回らず、質問にはお答えできません。ご理解よろしくお願いします。
・(のちのち)自分や他人を傷つける可能性のあるものは承認されません
・他の人への返信も原則禁止です。共感的なもの、相手に役立つものは一部、許可しています。短い時間で判断しているので「どうしてこれがダメなの?」みたいなものもあると思いますが、それはこちらのミスであることも多いです。ご了承ください。
【取材対応。テレビや雑誌、Webメディアの人へ】
気軽にご相談して下さい。 toiawase@wasedamental.com
方針についてはこちら  • テレビや雑誌、WEBメディアなどの取材対応に...
【公認の切り抜き動画はこちら】
/ @ch-rf2ss
【動画制作の裏側はこちらから】
/ @wasedamasuda

Пікірлер: 133

  • @Chantama.
    @Chantama.2 жыл бұрын

    とっても優しい物腰で話す担当医だったけど、薬だけではなくカウンセリングでトラウマを解消したいと思って話そうとしたら、「治したいから通ったんですよねぇ?もうやめるんですか?」と怒鳴られたことがある。自分の考えを伝えようとしたけど、上司に叱られたトラウマで鬱になっていた自分はもう一言も喋れませんでした。それから通院をやめて数年、やっと普通に働けるようになったけど、あの先生の態度だけは癒えない傷になってしまいました。心の病気抱えてる患者に怒鳴るなよ……と今でも思います。相性の良い先生に出会えてたらなぁ。

  • @user-pi2gs4hv7g
    @user-pi2gs4hv7g2 жыл бұрын

    15 年以上躁鬱で何人か主治医も変わったけど今は月一に会って薬出してくれる人としか思えなくなってる。悩み言っても解決方法なんてないし、躁鬱が良くなる気もしないと心底思ってる。

  • @user-ohanazuki
    @user-ohanazuki2 жыл бұрын

    益田先生、とても身近に感じられるのに、しっかりと先生としての勉強もされてるし、信念も持っていらっしゃるし。親近感と尊敬、両方を先生に対して感じています。主治医の先生も価値観は似てるわけじゃないけど、同じように、親近感と尊敬を感じられています。このふたつの気持ちがお医者様と患者がいい関係でいられる秘訣なんじゃないかと改めて思いました。

  • @bisejp
    @bisejp2 жыл бұрын

    最悪に状況が悪くて不安に押しつぶされていて、それでもしっかり者の自分を演じなければならなかったとき、たった一人本当の自分の悩みを打ち明けられて、承認してくれたのが精神科の先生でした。一度治ったのに、今また舞い戻っちゃって申し訳ないんですが、社会的に弱さを見せられない中で、唯一それを受容してくれる駆け込み寺があることは、私にとって大きな救いです。

  • @tsaeko6022
    @tsaeko6022 Жыл бұрын

    長く診てもらっている主治医が、病気の良くなった私に「そろそろ病気に飽きただろ?」と仰いました。ストンとお腹に落ちましたね。それからどんどん寛解に向かい今があります。その主治医に出会うまでに20人くらい医者を変えました…相性はありますね!

  • @niki3706
    @niki37062 жыл бұрын

    全知万能に態度や表情、話し方を変化させて全ての人の個性や状態を出会った瞬間に敏感に悟って100%患者さんに合わせられる医師がいたら、もうそんなんは神か仏かその類だと思う(人間ではないと言いたい)

  • @chankan5402
    @chankan54022 жыл бұрын

    相性はホントにあると思います。私は怒りを出す人に恐怖を感じるので淡々とした主治医があいます。みんな相性よい先生の元で元気になれたらいいなぁ。

  • @dera9757
    @dera97572 жыл бұрын

    いくら医療って言う契約行為であってもお互い人間ですからね。当然ですね。

  • @user-ne2xj2ij7k
    @user-ne2xj2ij7k2 жыл бұрын

    息子の主治医の先生は、あまり話さずニコニコしていて、息子の表情で判断します。息子は知的障害があり、言葉はオウム返ししかできません。よい先生で良かったと思っています。

  • @Omine.raillines01
    @Omine.raillines012 жыл бұрын

    今日のテーマよくわかります。僕の主治医はふわっとしたこだわりの少ない精神医学の教科書のような先生です。訪問看護の看護師さんは色々な方いますが、僕が理屈の好きなタイプなので訪看さんのお話しのほうがよく理解できます。主治医の博士は分かった上で僕に訪問看護を勧めたのだと最近考える様になって来ています。☺️☺️☺️

  • @chantama6826
    @chantama68262 жыл бұрын

    普段、あまり何も言わない主治医ですが、本当にダメな時は必ず気づいてくれます。

  • @beebee_41
    @beebee_412 жыл бұрын

    距離感大事ですよね、依存したくないし。

  • @user-oq7wl7ld1c
    @user-oq7wl7ld1c2 жыл бұрын

    私の主治医はものすごく淡々としていて冷静です。でもその一方で、たまに大変だよねって共感してくれることが嬉しくて、通い続けてます笑

  • @user-ky2vx5kf6w
    @user-ky2vx5kf6w2 жыл бұрын

    私は依存するのもされるのも嫌いなので、

  • @user-xq1xb6bn8l
    @user-xq1xb6bn8l2 жыл бұрын

    私は男性の先生が苦手で、同性の女医さんに診てもらってますがやっぱり相性はあると思います。

  • @user-ex4xy1el7j
    @user-ex4xy1el7j2 жыл бұрын

    私のパートナーはBPDなのですが、

  • @user-wn3lg6cb8x
    @user-wn3lg6cb8x2 жыл бұрын

    失敗したくないと思って評判の良いところへ行っても自分に合わないところのほうが多かったです。

  • @user-ul3nu3mz9k
    @user-ul3nu3mz9k2 жыл бұрын

    初めて受診した日、初めて精神科の薬を飲み始めた日、正直記憶もおぼろげで、診察の時自分で何を喋ったのかさえ覚えていません。でも何か一生懸命伝えなきゃ!とは思ってました。自分で気分転換を図りましたがうまく行かず半年ぐらいたった頃、希死念慮が出てきて、そんな自分にビックリしたのを覚えています。すでに寛解?状態だと思いますが、素直に言うことを聞けたのはやっぱり先生との相性、だと思います。

  • @user-wh3br3yg6z
    @user-wh3br3yg6z2 жыл бұрын

    相性いいか悪いか判断するのちょっと難しいですね。

  • @mari.japanesebobtail
    @mari.japanesebobtail2 жыл бұрын

    相性。共感できるかできないか。考え方が、共通点が多いかどうか??

Келесі